テルモリ族 狼の民

 神々の戦争の時代、テルモリ族に連なる狼たちは、幾多の敵と戦い、またその多くを喰らってきました。テルモリ族の餌となった敵の中には「太陽」も含まれています。そのお陰で彼らは暗黒の時代の長い冬を乗り越えられたのです。
 テルモリ族の発祥の地は南フロネラですが、曙の時代にグバージ側に組したために祖先の地を追い払われ、上ペローリアを抜けて各地をさ迷い歩くことになりました。現在ではテルモリ族は北ラリオス、ブローリア、ドラゴン・パス、東ドラストールのトブロス台地、アガーのビリツ丘陵あたりに住んでいます。
 ドラゴン・パスのテルモリ族に目を向けますと、彼らはヒョルト人と長らく戦をしておりました。ST1460年頃にはザ・クリークを渡り、幾つもの部族に大きな被害を与えました。そのころヒョルト人は、後にジョンスタウンの市長となる“鎖帷子の”ジョンを指導者として狼を崇める部族と戦い、幾度かは大きな戦功を上げましたが全体としてヒョルト人の方が圧されていました。そして1480年にサーターがこの地を訪れ、サーターはテルモリ族との和平を成し遂げました。これ以来、テルモリ族はサーター王朝の当主に対しては友好的で有りつづけたのです。
 今でもテルモリ族はサーターの諸部族の1つと見なされていますが、近隣の住民からは恐れられ憎まれており、人目を避けて生活をしています。また混沌に汚されていると考えられており、獣形の時には人肉を食べるとも言われています。彼らはいまだサーター王国の一部でありますが、ルナー帝国がサーター王家を滅ぼした後は、近隣諸部族のテルモリ族に対する恐怖が表出し、ボールドホーム陥落1年後にはテルモリ族に対する攻撃が行われました。
 テルモリ族に対する最大の攻撃はルナー帝国によってなされました。帝国に対して忠誠を誓ったマボダー部族を、テルモリ族がほぼ全滅させたのです。これに対する反撃は厳しく、また激しく、結局テルモリ族はルナーに降伏しました。彼らの領地は縮小され、また帝国に人質を取られ、こうした決定に不服を持ったテルモリ族は無法者とされました。

 テルモリ族は狼を祖霊と崇めるスンチェン人で、狩猟が生活の中心となっている未開人です。彼らの生活は狼抜きでは考えられません。狼と共に生活し、狼と共に狩をします。またテルモリ族の子供は、仔狼と遊ぶのです。は狼と常に生活を共にし、彼らは、というよりもスンチェン人は2本足と4本足の、即ち人型と獣型の部族民を区別しておらず、どちらも同じ部族民と見なしています。そしてテルモリ族は、死ぬと再び2本足か4本足のテルモリ族として生まれ変わると伝えています。
 彼らは成人すると、生涯の友とも言うべき狼、「狼の兄弟」を持ちます。この狼は通常の狼よりよりも大きく、また高い知性を持っています。狼が死ぬか殺されるかした場合、通常は新たな兄弟を得ることは出来ません。テルモリ族は個人の力を「狼の兄弟」で計っており、兄弟を失った偉大な戦士よりも、強い力を持つ普通の戦士の方が高い地位につきます。

 一般には、テルモリ族は人狼だと噂されていますが、それはグバージ戦争の際にグバージにより混沌の穢れを受けた者がいるためです。そうした者たちとその子孫らは“呪われた者”Cursed Onesとなりました。

文化キーワード

肉体能力
 〈隠れる〉〈近接戦闘(槍と楯)〉〈走る〉
精神能力
 〈狼との会話〉〈テリトリーの地理〉〈テルモー伝承知識〉〈テルモリ族の慣習〉〈テルモリ族の神話〉
性格
 〈テルモリ族以外に疑い深い〉〈テルモリ族以外に狭量〉〈ルナー帝国嫌い〉
縁故
 テルモリ族に対するもの、群れの祈祷師に対するもの、狼の兄弟に対するもの(〈友〉か〈従者〉、稀に〈足手まとい〉)
魔術
 テルモリ族は祈祷師を通じて狼のトーテムと触れ合う精霊崇拝者である。彼らはトーテムの精霊と融合し宿能を獲得していくことにより完全な姿へと近づいていく。
 通過儀礼を済ませたものは3つの宿能を持っている。
弱点
 家畜を狩りもするテルモリ族は、近隣の住人からは恐れられています。また混沌に汚されたという歴史があるため、多くの人々から不信の目で見られています。

職業キーワード

 狩人と戦士に関しては、厳密には明確な区別があるわけではありません。狩人も戦いには参加をしますし、戦士も日常は狩をしています。これはどちらが得意かを現すためのものにしか過ぎません。どちらにしても名を馳せ、人望を集めたものは「狼の戦士」を呼ばれるようになります。
 ただ祈祷師見習いだけは異なり、彼らは狩りに参加することもありますが、日常は祈祷師の仕事を手伝い、その見返りとして祈祷師として必要な技を教えてもらっています。

狩人

 狩人と見られるのは群れの中でも狩の得意な者達です。彼らは獲物を駆り立て、戦士のいる方向に追い込んだり、見失った獲物を追い詰めたりします。

肉体能力
 〈獲物を追い込む〉〈忍び寄る〉〈射撃戦闘(ジャベリン)〉〈射撃戦闘(アトラトル付きジャベリン)〉〈鋭い眼差し〉〈物陰に隠れる〉
精神能力
 〈跡を追う〉〈獲物となる動物の知識〉〈聞き耳〉〈危険が無いか調べる〉
性格
 〈我慢強い〉
縁故
 特になし
魔術
 狼の精霊との融合のみ
生活水準
 最低
装備
 ジャベリン数束、アトラトル、楯

小祈祷師

 群れの指導者である祈祷師に付き従い、精霊の事柄について学んでいるものたちです。まだ群れを率いることは出来ませんが、それでも群れの者たちからは相応の敬意を持って扱われています。

肉体能力
 覚醒させることのできる魔精を持っていること
肉体能力
 〈呪物を作る〉〈召喚円を描く〉〈堂々たる風貌〉
精神能力
 〈狼の精霊に乗る(〈精霊界移動〉に相当)〉、〈感情を見抜く〉、〈儀式を指導する〉、〈呪的逃走〉、〈精霊戦闘〉、〈精霊視〉
性格
 〈賢明〉
縁故
 群れに対するもの、群れの祈祷師に対するもの、伝承に対するもの
魔術
 
生活水準
 並
装備
儀式の道具、群れからの援助、ジャベリン、楯

戦士

 戦士と見られるのは群れの中でも戦の得意な者達です。彼らは群れの外縁を守り、常に周囲への警戒を怠りません。そして敵や獲物を見つけた場合、仲間へ走り知らせるのです。

肉体能力
 〈恐ろしげに見える〉〈近接戦闘(槍と楯)〉〈鋭い聴覚〉〈走る〉〈物陰に隠れる〉
精神能力
 〈敵の混乱〉〈群れの戦術〉〈群れの防衛知識〉
性格
 〈誇り高い〉〈勇敢〉
縁故
 テルモリ族に対するもの、群れの祈祷師に対するもの、狼の戦士に対するもの
魔術
 狼の精霊との融合のみ
生活水準
 最低
装備
 ジャベリン、アトラトル、楯、

上級職業キーワード

大祈祷師

 群れのアルファ(指導者)です。

魔術キーワード

すべてのテルモリ族は部族のトーテムであるテルモーと交流しています。

テルモー伝承

 テルモーはスンチェン人の崇める狼のトーテムです。彼はすべての狼の祖先であり、彼の子供には偉大な狼の精霊が沢山います。動物の精霊達とは良い関係を築いていますが、動物以外の精霊はテルモーの祈祷師に敵意を示しています。

加入条件
 テルモリ族であること。
 テルモリ族で無い場合、縁組の儀式を行うことによって部族に受け入れられることが必要である。
肉体能力
 〈遠吠えをあげる〉〈群れで戦う〉
精神能力
 〈精霊戦闘〉〈祖先についての知識〉〈テルモー神話〉〈テルモー伝承知識〉
伝承精霊
《祖霊》
 (1種類の能力か性格特性を提供するのが典型的)
《狼の精霊》
 (一般的な精霊として《狼の眼》《銀のあしうら》《耐えるもの》《強きもの》《濡れた鼻》《跳ねるもの》など)
《群れの精霊》
 (一般的な精霊として《追い立てまわすもの》《恐るべき咆哮》《傷口を舐めるもの》《見張るもの》など)
特殊精霊
 《老いぼれ狼》《狂犬病【canine madness】》
同盟精霊
 《狼の精霊》
魔精
 《狼の精霊》
呪物
 テルモーの祈祷師は獲物の骨や皮などから呪物を作る。時には刺青を施すこともある。
奥義
 《狼に変身する》
 
信者
 テルモリ族
異界
 テルモーのテリトリーは精霊界にある鬱蒼と繁る大森林であり、彼の大きな群れはそこの近辺を狩場としている。テルモリ族は死ぬと2本足、4本足に関わらず、テルモーの群れに入り狩りに加わる。そしてやがて2本足か4本足の姿をとって、新たなテルモリ族として生を受けるのである。
弱点
 動物の精霊以外の精霊からは嫌われているため、彼らとは交渉の余地が無い。彼らの力を用いる際には〈精霊戦闘〉に打ち勝たなくてはならない。時には彼らの方から攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

テルモー伝承の特殊精霊

《老いぼれ狼【Old Wolf】》

 精霊力:15〜15W
 この精霊は狼の群れの頭である。この精霊は融合されることも、呪物に収められることもあり、集団戦闘になったときに指揮能力や戦闘能力を増強する。

《狂犬病【canine madness】》

 精霊力:15〜15W

狼の兄弟

 テルモリ族の狼の兄弟たちは普通の狼よりも大型で、大狼なみの大きさを持っています。『ヒーローウォーズ 〜英雄戦争〜』P181の狼の主要な能力に〈大きい:15〉を付け加えてください。
 またテルモリ族の指導者やヒーローは大狼を狼の兄弟としていることがあります。大狼については『ヒーローウォーズ 〜英雄戦争〜』P181を参照ください。
 ただしヒーローの狼の兄弟の場合は〈友〉〈従者〉〈足手まとい〉となりますので、通常の縁故のルールに従った能力となります。

〈大きい〉

 『ヒーローウォーズ 〜英雄戦争〜』ではその基準が説明されていませんが、動物誌とも言うべきサプリメント『Anaxial's Roster』では説明されており、読んだ通りその能力の持ち主の大きさを現しています。反対の能力としては〈小さい〉があります。この能力を持たない場合、人間と同じ大きさと見なされます。目安としては〈大きい:15〉は駝鳥だちょう並みの大きさで、まあ大鹿〈大きい:12〉より大きくて、ライオン〈大きい:18〉より小さいと思ってください。

“呪われた者”Cursed Ones

 すべてのテルモリ族が人狼だというわけではありません。グバージの呪いを受けたテルモリ族だけが人狼となり、“呪われた者”Cursed Onesと呼ばれてます。それ以外の普通のテルモリ族は“純なる者”Pure Onesとなります。
 “呪われた者”Cursed Onesは獣化をコントロールすることが出来ず、荒の日の夕暮れから夜明けまで無意識のうちに人狼となってしまいます。またテルモーの力を借りて、意識的に狼に変わることも出来ます。“純なる者”Pure Onesは例え荒れの日の夜であっても、無意識のうちに狼に変わることはありません。
 付け加えるならば、荒の日に赤い月は満月となります。

この文章について

 著者:鮎方髙明(ayukata@dunharrow.org)
 このキーワードは鮎方髙明が作成したものです。
 これはグローランサ・ファンによる創作物であり、公式版ではありません。各人の選択において使用して下さい。この文章により何らかの害を受けたとしても、著者は関知いたしません。この文章は、非営利目的においてのみ、複製が許可されます。
 なお公式版が発表された場合、この記事は削除されるか、もしくは公開し続けるにしても、私家版であることをより強く表明した形をとると思われます。
 またスンチェン人のキーワードが発表された場合は、その内容を見て削除もしくは修正をしたいと思います。
 ただテルモリ族は精霊崇拝者ですので、呪術のルール改定が明言されている2版が出版されればキーワードも変更します。多分、1版用と2版用の併記になると思いますが。

 トーム:グローランサのひみつでは「ダックのものがたり」と題されてダックのキーワードが収録されていますので、これをあわせればサーターの諸部族すべてがプレイ可能になるのではないでしょうか。

参考資料